王族の婚姻に振り回された聖女ですが、幸せを見つけました
 誰も気にしてくれないクレアの心を見抜いて、欲しい言葉をかけてくれる。聖女になる前のクレアを知っていて、これからもずっとそばにいてくれる人。
 ただの女の子に戻りたい。その気持ちごと大事にしてくれる人。
 そんな人、ジュリアン以外に知らない。

 そのことに気づいて、クレアは救われたような心地になった。聖女の自分が誰かに救われるなんてと思ったが、嬉しいと感じた気持ちをなかったことにはしたくない。
 ふと、ジュリアンが手を離した。まるで、クレアに自由な選択権を与えるように。

「ねえ、クレア。これからは俺に君を守らせてほしい」
「え……」
「俺、クレアに好かれるように努力するよ。君の嫌がることはしない。だから、そばにいてもいい?」

 許可を求める声が思っていたよりも甘くて、クレアの心は屈した。
 潔く負けを認めよう。恋愛スキルが低い現状では到底、太刀打ちなどできない。というか、心臓が保たない。自分がこれからも生き延びていくためにも、早く気持ちを打ち明けよう。
 それにしても不思議だ。
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