王族の婚姻に振り回された聖女ですが、幸せを見つけました
 今の自分は王太子だ。権力で身分の用意など、どうとでもなる。他にも入れ替えが必要だと感じた侍女もすでに代わりを見つけている。
 彼女の護衛騎士も自分の護衛から一人選び、残りは貴族のしがらみがない新人騎士から有望な男を何人か選んである。聖女に恋はしないことを誓った念書は執務室に保管済みだ。抜かりはない。

(……おそらく、今日のことで警戒されているだろうから、まずは警戒を解かなくちゃな。さて、何を手土産に許しを請おうか)

 今回の調査過程で彼女の好みはだいたい把握したが、自分から言ってもいないことを知られているのは気分がよくないだろう。あくまで彼女の口から聞いてから用意するのがいい。
 円滑な人間関係の構築において、印象操作は大事だ。
 今後は攻めるばかりではなく、年下らしく甘えてみる方法もいいかもしれない。見たところ、クレアは甘えられることに弱いようだ。長年、弟妹の面倒を見ていた影響だろう。
 しかし、無害だと安心されて弟ポジションを確立しても困る。やりすぎは禁物だ。
 ちゃんと異性として意識されるように、ほどよく調整する必要がある。

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