王族の婚姻に振り回された聖女ですが、幸せを見つけました
(……頑張ろう。聖女になった彼女を、普通の女性として愛するために。あと、もし好きだと言われても、うっかり押し倒さないように、いざというときのシミュレーションもしておかないと……)

 人生はいつだって予想外のことが起きる。
 不可能だと諦めた夢が現実として叶うことがあるぐらいだ。こんな奇跡が突然転がり込んでくるなんて経験、もうないだろう。
 頭上で小鳥が鳴き声を上げて必死に羽をばたつかせながら、親鳥を追いかけていく。その姿を眺め、ジュリアンはクレアと初めて会ったときのことを思い出した。

 ◆◆◆

 それは、初めて王宮から抜け出した帰り道のこと。
 下町で大きな祭りがあったせいで人波にのまれてしまい、護衛とはぐれてしまった。不運はそこで終わらなかった。お酒で気分がよくなった酔っ払い数人に絡まれ、気づけば酒樽のように担がれていたのだ。
 まるで荷物のように運ばれている状況に、頭の理解が追いつかない。
 いくら暴れても屈強な男の体はびくともしなかった。一体どこに連れて行かれるのかと考えて、嫌な想像が脳裏をよぎった。

(……まさか、俺は売られるのか?)

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