王族の婚姻に振り回された聖女ですが、幸せを見つけました
 自分が先に生まれていれば。

 そう思ったことは一度や二度ではない。しかし、聖女の婚約者に名乗りを上げて認められるほど、ジュリアンには特別際立った成果がなかった。
 王太子の椅子は兄がふさわしい。
 第二王子であるジュリアンはせいぜい二番手だ。ゆくゆくは国王となった兄を支えるための駒に過ぎない。そう自分に言い聞かせていた時期もあった。
 しかし、今は自分がクレアの婚約者だ。
 もう二度と、彼女を諦めるつもりはない。彼女を幸せにする役は自分だ。
 ジュリアンにはクレアが必要なように、いつか彼女にも必要としてもらえるように。どちらかに依存するのではなく、お互いを支え合うような関係になりたいと思う。

 ◆◆◆

 その後、王太子妃になった後も聖女は世界中に足を運び、身分や人種にとらわれず、あらゆる人の不治の病さえ治していった。
 彼女のサポートは、夫の王太子自らが務めていたという。
 聖女は王族より尊ぶべき存在だと王太子は主張し、ただのお下がりの妃にするのを拒んだ。
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