環境が最悪なので推し活してたら推しから溺愛されることになりました
◆◇◆
「佐伯さん。例の原稿まだ終わってないの?」
向かいのデスクから、橋本主任の鋭い怒声が飛んで来る。
それを真正面から受け止めるしかなかった佐伯美知華は、慌てて席を立って事情を説明する。
「えっと、あの原稿は近藤さんに渡してあるんですが……」
例の原稿とは、今日締め切りのWEBマガジン用の記事である。
少し前に同じ課の近藤舞衣に残りの部分を託していたはずだ。
しかし、当の舞衣は席に着いて自分のネイルを眺めたまま口を開いた。
「え~? 舞衣、そんなの頼まれた覚えありませぇん」
「え、えッ? 二週間前にちゃんとお願いしましたよね?」
「知らないったら知らないです。それにもし依頼したなら、途中経過とか聞けばいいじゃないですか。そういうの全然無かったですよね」
「それは……」
それは他の仕事で手一杯だったからだ。
しかもその仕事のほとんどが、近藤の記事や企画のフォローだった。
「主任~。舞衣が悪い感じですか~?」
語尾の伸びた甘ったるい声で、舞衣は主任にそう訊ねる。
舞衣にその気がある橋本主任には、それがよく効くと知っていて。
「あー。それは佐伯、おまえがしっかり進捗も含めて確認してないのが悪い」
「そんな……っ」
「原稿は今日中に佐伯がやっておきなさい」
「……!」
橋本主任はそれ以上この件を喋る気が無いのか、席を立ってどこかへ行ってしまった。
美知華は唇を噛み締めながら立ち尽くす。
「佐伯先輩~。今度からは私も、原稿もらってないかちゃんと確認しておきますね~」
煽っているとしか思えない物言いで、舞衣は謝罪のポーズだけ取った。
「……その時はよろしくお願いします」
怒りをグッとこらえ、美知華も席を立つ。
気持ちを切り替えるため、缶コーヒーを持って屋上へと向かった。
「佐伯さん。例の原稿まだ終わってないの?」
向かいのデスクから、橋本主任の鋭い怒声が飛んで来る。
それを真正面から受け止めるしかなかった佐伯美知華は、慌てて席を立って事情を説明する。
「えっと、あの原稿は近藤さんに渡してあるんですが……」
例の原稿とは、今日締め切りのWEBマガジン用の記事である。
少し前に同じ課の近藤舞衣に残りの部分を託していたはずだ。
しかし、当の舞衣は席に着いて自分のネイルを眺めたまま口を開いた。
「え~? 舞衣、そんなの頼まれた覚えありませぇん」
「え、えッ? 二週間前にちゃんとお願いしましたよね?」
「知らないったら知らないです。それにもし依頼したなら、途中経過とか聞けばいいじゃないですか。そういうの全然無かったですよね」
「それは……」
それは他の仕事で手一杯だったからだ。
しかもその仕事のほとんどが、近藤の記事や企画のフォローだった。
「主任~。舞衣が悪い感じですか~?」
語尾の伸びた甘ったるい声で、舞衣は主任にそう訊ねる。
舞衣にその気がある橋本主任には、それがよく効くと知っていて。
「あー。それは佐伯、おまえがしっかり進捗も含めて確認してないのが悪い」
「そんな……っ」
「原稿は今日中に佐伯がやっておきなさい」
「……!」
橋本主任はそれ以上この件を喋る気が無いのか、席を立ってどこかへ行ってしまった。
美知華は唇を噛み締めながら立ち尽くす。
「佐伯先輩~。今度からは私も、原稿もらってないかちゃんと確認しておきますね~」
煽っているとしか思えない物言いで、舞衣は謝罪のポーズだけ取った。
「……その時はよろしくお願いします」
怒りをグッとこらえ、美知華も席を立つ。
気持ちを切り替えるため、缶コーヒーを持って屋上へと向かった。