環境が最悪なので推し活してたら推しから溺愛されることになりました
「『イケリウム』さん、入りまーす」
 一瞬にして、現場の雰囲気が変わった。
「おはようございますー」
 三人が、息を合わせた挨拶と共に入室してくる。
(はわわ……なんかオーラある……凄いっ)
 推しだから、とかそんなこと関係無く、『イケリウム』の三人からは、いわゆる芸能人のようなオーラが感じられた。
 リーダーのイグニスも、丁寧に挨拶するニクスも、配信で見るよりもずっとカッコイイ。
 何より……
「今日はよろしくお願いしまーす」
 キャップを取って改めて挨拶をするアクアに、美知華は釘付けになった。
 ファッション系の動画を担当していることもあって、上から下まで人気ブランドで固めている。けれど決して服に着られることなく、しっかりと着こなしているほどスタイルも抜群だった。
 アクアは、小さい顔をキョロキョロと動かしながら、何かを探しているような素振りを見せている。
「キャーッ! 初めまして、広報の舞衣ですぅ! 『イケリウム』のみなさん、配信で見るよりずっとずっとカッコイイですねー!」
 それでは挨拶といこうと思った矢先、舞衣がミーハー丸出しで『イケリウム』の三人の前に立った。
 三人とも若干顔を引き攣らせており、あまり舞衣を相手にはしていないようだった。
(有名配信者だもん……近藤さんみたいな女性に絡まれること、嫌というほどあるだろうし)
 それでもカッコイイと言われ続けるとまんざらでもなくなるものなのだろうか。
 というのも、舞衣がああいった態度で配信者に近付き、何人もの配信者と関係を持った……という噂も実はされているからだ。
 どうか『イケリウム』のみんなは彼女の毒牙にかからないでくれと祈りながら、改めて美知華が三人の前に立つ。
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