蕩ける愛であなたを覆いつくしたい ~最悪の失恋から救ってくれた年下の同僚に甘く翻弄されています~
 「この写真も、浅野くんが撮ったの?」
 「ええ。それ、結構気に入ってて」
 「すごく素敵。プロが撮った写真みたい」
 彼は口角を引き上げ、嬉しそうに微笑んだ。

 「あ、ソファーに座っててくださいね」と言い残してキッチンに向かい、しばらくして湯気の立っているマグカップを二つ持ってきた。
 そしてサイドテーブルを引き寄せ、わたしの前に置く。

 ふわっと、甘い花の香りがあたりに漂った。
 「カモミールなんだけど、飲めます? 蜂蜜も入れたけど」
 「うん、大丈夫。好きだよ。ありがとう」
 暖かくて甘い飲み物は身体だけでなく、心も温めてくれた。

 わたしは両手で飲み終わったカップを抱えたまま、彼を見た。
 「浅野くん、本当にありがとう。助かったよ」
 「いや、俺が無理矢理誘ったんだから、そんなに気を使わないでくださいって」
 「でも……」
 「さ、話は明日。それ飲んだんなら、もう寝ましょう。来てください。寝室、案内しますから」

 浅野くんは話を遮り、リビングを出て行こうとする。
 わたしは慌てて彼の後を追った。

 「ねえ、ほんとに、どうやってお礼すればいい? こんなに良くしてもらって」
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