蕩ける愛であなたを覆いつくしたい ~最悪の失恋から救ってくれた年下の同僚に甘く翻弄されています~
 「何、それ。そっちこそ、会社にいる時とぜんぜん違うじゃない。すぐからかってくるし」

 「そう。実は腹黒なんですよ、俺。さ、本当に遅くなるから」

 そう言って、まず洗面所、そしてゲストルームに案内してくれた。
 ベッドとサイドテーブルだけの、シンプルな部屋だった。

 「そうだ。明日の予定とかありますか?」
 「ないない。その先だってどうなるかわからないんだし」
 「そうでしたね。じゃあ、お休みなさい」
 「うん、お休み」

 洗面を終え、部屋に入り、ベッドに腰をおろす。
 
 浅野くんとのやり取りで、ほんの少しショックが遠のいていたけれど、こうして一人になると数時間前の記憶がまざまざと脳裏に蘇ってくる。

 よりによって、同じ部の留奈を家に連れ込むなんて。
 誘惑したのはたぶん彼女だろうけど、もう完全にアウト。
 あそこはわたしの家でもある。そこであんなことされたら、もう宣人のことは一切、信用できない。

 正直、会社にも行きたくない。
 でも、今の会社をやめるつもりはない、というか、やめることなんてできない。

 失業した娘を養ってくれるほど、うちは裕福じゃないから。
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