蕩ける愛であなたを覆いつくしたい ~最悪の失恋から救ってくれた年下の同僚に甘く翻弄されています~
 評判が評判を呼んで、彼を指名してくる新規の顧客もいるぐらい。
 そして、とびきり美形の彼は、クライアントだけでなく、社内の女子たちの憧れの的だ。

 「ちっ、顔のいい奴は得だよな」
 そう言いながら、書類を手にわたしの席にやってきたのは、同期の伊川宣人(のぶと)。彼も営業だ。

 「宣人、また舌打ちしてる」
 わたしが小声で注意すると、さらに不満げに眉を顰める。
 最近、機嫌が悪い。先月、はじめて浅野くんに販売成績を抜かれたからだろう。
 でも、年間通せば、まだまだ宣人の右に出る者はいない。部内で主任昇任の一番手と目されている。
 
 自信家で態度は尊大だけれど、それが仕事の上では安心感につながるらしい。
 浅野くんとタイプは違うけれど、取引先からの信頼は厚い。
 肩幅が広く上背があり、黒髪の短髪できりっとした印象。イケメンの部類に入ると思う。
 彼氏なのでひいき目もあるかもしれない。

 そう、わたしたちは1年前から付き合っている。
 そして3カ月前からは、彼のマンションで同棲していた。

 挨拶程度の間柄だったから、告白されたときは驚いた。でも、バリバリ仕事をする姿に憧れていたので、そのときはとても嬉しかった。
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