蕩ける愛であなたを覆いつくしたい ~最悪の失恋から救ってくれた年下の同僚に甘く翻弄されています~
 わたしは彼の目を見て、ゆっくり首を振った。
「ううん、話し合いの余地なし。彼とは別れるし家も出るつもり。新しい部屋、すぐには見つからないだろうから、まずはマンスリーマンションを探そうかと思ってる」

「マンスリーマンションって結構かかるんじゃないですか」
「うん。でも仕方ないし。なるべく割安のところを探す」

「でも、家、見つかっても礼金とか敷金とか」
「そうだよね。うー、しばらく節約生活しなきゃ。本当、災難だよ」

 浅野くんはなんでもないことのように、あの、良ければなんですけれど、と前置きしてから言った。

「梶原さん、ここに住みませんか」
「えっ?」

 思わずお茶を吹きそうになった。
「な、何言ってんの、浅野くん」

 慌てるわたしとは対照的に、彼は涼しい顔をしている。

「何って。ここ、部屋余ってるし。敷金も礼金どころか、家賃もかからないですよ。まあ光熱費と管理費の一部ぐらいはいただくにしても」
「いや、そういう問題じゃないでしょう」
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