蕩ける愛であなたを覆いつくしたい ~最悪の失恋から救ってくれた年下の同僚に甘く翻弄されています~
 わたしは意を決して「宣人、いるの」と声をかけながらリビングに入った。

 彼はソファーにだらしなく寝そべって、テレビを見ていた。
「茉衣か」
 わたしの方を見ずに、宣人は言った。
 お笑い芸人の明るい声がやけにむなしく聞こえる。

「当座の荷物、取りにきただけ。大きいものは引っ越し先が決まってから連絡するから、もう少し置いておいて」
「出ていくのか」
「決まってるでしょう」
 わたしは宣人の横顔をにらみつけた。
「あんなことされて、もう一緒になんか暮らせない。本当なら二度と顔も見たくなかった」

 彼はようやくこっちを見た。
 その目に浮かんでいたのは、反省ではなく憤りだった。
「あんなことって、それはこっちのセリフだ。ベッド水浸しにされて、あのあと、どれだけ大変だったか」

「自業自得じゃない」
 冷たく言い放つわたしの顔を見て、宣人はチッと舌打ちした。

「お前って、本当に可愛げないよな。俺、お前のそういうところが耐えられなくなってきてたんだよ」

 わたしは目を丸くした。
 何を言っているんだろう、宣人は。

「えっ、どういうこと。わたしが悪いって言いたいの?」
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