蕩ける愛であなたを覆いつくしたい ~最悪の失恋から救ってくれた年下の同僚に甘く翻弄されています~
 「ああ、いつも、ああしろ、こうしろって上から物言ってくるし。男を立てるってこと、学んでこなかったんだな、まったく。だから、こっちもつい他の女に手を出したくなるんじゃねえか」

 わたしが口を開く前にバンと、ドアが開き、正美が血相を変えて乱入してきた。

 「ちょっと、伊川! その言いぐさ、あんまりじゃない!」

 宣人はまた舌打ちした。
 「川崎か。お前は関係ねえだろう」
 「そう思ってたから、顔出さないようにしてたけど、もう無理。親友にあんなひどいこと言われたら黙っていられないって」

 2対1で不利だと思ったらしい。
 宣人は枕を抱えて、背を向けた。

 「ったく、どいつもこいつも。こっちが熱出して唸ってるときに。早く出て行けよ」
 「言われなくても、用事が済めば出ていくよ! ほら、茉衣、早くしよう」
 
 それからわたしが使っていた部屋に行き、持てるだけの荷物を持ってマンションを後にした。
 「本当に見損なった。あそこまでのクズだとは」と正美はまだ憤慨している。

 宣人のことだから、素直に謝らないだろうとは思っていた。
 でも、彼はわたしに浮気の原因があると、そう言ったのだ。

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