蕩ける愛であなたを覆いつくしたい ~最悪の失恋から救ってくれた年下の同僚に甘く翻弄されています~
 頭を撫でられている気がして、目を覚ました。

 お母さん?

 ゆっくり目を開けると、そこにいたのはスーツ姿の浅野くんだった。
 
 「あ、おかえり」

 夢だったんだな、やっぱり。
 彼がわたしの頭なんて撫でるわけないし。

 「こんなところで寝たら、風邪ひきますよ。先に寝ていてよかったのに」
 「でも……浅野くん『おかえり』って言ってほしいって」
 「それで……待っていてくれたんですか?」

 こくんと頷くと、彼はちょっと困った顔になった。

 「待ってないほうが良かった?」
 「そんなわけないじゃないですか」

 寒さのせいか、彼の頬は赤くなっている。

 「ほら、ほんとにもう寝ましょう。明日、会社あるんだし」
 「ほんとだ。じゃあ、明日ね」
 「はい、おやすみなさい」

 リビングから出る直前、彼はなにかぽそりと呟いたけれど、よく聞き取れなかった。

 聞き返そうとしたら、彼はもう背を向けて、自分の部屋に入っていった。

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