蕩ける愛であなたを覆いつくしたい ~最悪の失恋から救ってくれた年下の同僚に甘く翻弄されています~
 もう、突然、妙な色気、出さないでほしい。
 彼のイケメンぶりはだいぶ見慣れてきたとはいえ、耳元で囁かれたりするとやっぱり心臓に悪い。
 脈拍が急上昇した気がして、わたしは深呼吸して気を落ち着けてから、オフィスに戻った。

 でも、時間が経っても、さっきのドキドキがずっと尾を引いていて、仕事に集中できなかった。

 そうだ、こんな時はずっと気にかかっていた資料整理だ。
 デジタル化以前の数年分の会議資料が未整理のまま、放置されているのが前から気になっていた。

 机の上にメモを残し、わたしは資料室に向かった。

 
 ほうけた頭でも単純作業には支障がなく、小1時間ほどでファイリングは終了した。

 片付けを終え、入り口付近にある小さな手洗い場で手を洗っているとドアが開いた。

 宣人だった。

 
 「のぶ……伊川さん」
 わたしが言い直すと、宣人は口の端を歪めた。
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