蕩ける愛であなたを覆いつくしたい ~最悪の失恋から救ってくれた年下の同僚に甘く翻弄されています~
 宣人はわたしを壁に追い詰めた。
 その目が異様な輝きを放っている。ぞっとして身震いした。

 横をすり抜けようとするわたしを壁に押さえつけ、宣人は無理やり唇を奪おうとしてきた。
 わたしは首を左右に振って、あらんかぎりの抵抗を試みた。

 「いや、やめてったら」外に聞こえないように小さな声で抗議する。

 「出したければ声、出せよ。皆、まだ俺たちが付き合ってると思ってる。痴話喧嘩と思われるだけだろう。茉衣、お前も好きだったじゃないか。人目を盗んで、会社でこういうことするの……」
 
 にやっと口の端を歪めた宣人に強い力で顎を掴まれ、無理矢理、唇を奪われそうになり、さらに手がわたしの胸を弄ろうとしたそのとき……

 「伊川さん、何をやってるんですか!」

 浅野くんが宣人の肩をつかんで、わたしから引き離した。
 その声には突き刺さるほどの鋭さがあった。

 宣人はほくそえんだ。
 「何って、自分の女といちゃいちゃしてるだけだ。野暮な真似するなよ、浅野」

 浅野くんは宣人をにらみつけた。
 「茉衣さんを手ひどく裏切ったこと、もう忘れたんですか」
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