蕩ける愛であなたを覆いつくしたい ~最悪の失恋から救ってくれた年下の同僚に甘く翻弄されています~
 言うまでもなく楽しい時間を過ごした。
 でも、他に言いたいことがあるのに別の話で時間を埋めているような、そんなふわふわした空気が二人の間に始終、漂っていた

 食べ終えたころには21時を回っていた。
 
 「いや、美味しかった。ごちそうさまでした」
 「お粗末様でした。喜んでもらえてよかった。このぐらいじゃ恩返しの『お』も返せてないけど」

 彼は肩をすくめる。
 「まだそんなこと、言ってるんですか」

 「だって、本当に感謝してるから」
 「言われなくても、ちゃんと伝わってますよ」

 彼の表情や声にはいたわりが満ちていて、わたしはどうしたらいいかわからなくなってしまう。

 どうしてそんなに優しいんだろう、浅野くんは。
 胸が締めつけられて息が詰まってしまう、そんなふうに微笑まれたら。

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