蕩ける愛であなたを覆いつくしたい ~最悪の失恋から救ってくれた年下の同僚に甘く翻弄されています~

 ***

 「茉衣(まい)、帰ってこられるか。母さんの具合がよくなくてな」
 父から電話がかかってきたのは、翌週の水曜日の午後のことだった。
 母は昔から心臓が悪く、わたしが大学を卒業したころから、入退院を繰り返すようになっていた。

 「わかった。休暇もらえるように頼んでみる」

 母が病気であることは前から上司に話していた。
 繁忙期ではなかったので、その日の半休と木曜、金曜の休暇がもらえた。
 わたしは急いで部屋に戻り、荷物をまとめ、新幹線で2時間あまりの実家に向かった。
 
 外回りに出ていた宣人(のぶと)には「日曜日に帰る」とだけ連絡して。

 病院に着いたとき、母の容態は好転していた。
 早めに処置したことが幸いしたようだ。

 「お母さん、大丈夫?」と、わたしは母の手を握った。
 「茉衣、帰ってきてくれたんだね。ごめんね」
 弱々しいながらも、母はしっかりとわたしの手を握りかえした。

 父が戻ってきて、スツールを引き寄せて、わたしの横に座った。
 「会社を休ませて悪かったな。お医者さんの話では今回は問題ないようだ」
 「ううん、大丈夫。有給がだいぶ溜まってたし。お母さんの顔が見られて安心した」

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