蕩ける愛であなたを覆いつくしたい ~最悪の失恋から救ってくれた年下の同僚に甘く翻弄されています~
 宣人は何か企むのではないか。
 わたしの心配は募る一方だった。

 「本当に気をつけてね」
 夜、夕飯を食べながら、一樹に念を押す。
 でも、彼はただ微笑みかえすだけ。

 「心配性だな、茉衣は」
 なかなか本気にしてくれない一樹に、焦燥が募る。

 彼の胸に顔を埋めても、なかなか眠りにつくことができなかった。

 ***

 翌日の午前10時ごろ、曽根部長が慌てた様子でオフィスに飛び込んできた。

 「浅野はいるか」
 
 出かける支度をしていた一樹は「なんでしょうか」と答えた。

 「至急、社長室に来てくれ」
 それだけ言って、部長は先に出て行った。

 嫌な予感がして、思わず宣人を見ると、口元にかすかに笑いを浮かべている。

 ああ、やっぱり。
 わたしは心配が的中したことを悟った。

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