蕩ける愛であなたを覆いつくしたい ~最悪の失恋から救ってくれた年下の同僚に甘く翻弄されています~
 一樹はずっと戻ってこなかった。

 やきもきした気持ちを抱えたまま、昼の休憩時間になった。
 食欲がまるで沸かないので、そのまま自席で仕事を続けていた。

 パーテーションの奥で、女子社員数人が応接ソファーを陣取って、昼食を食べていた。
 そこに秘書課の子が飛び込んできた。

 「ねえ、大変だよ。浅野くん、会社、辞めさせられるかもしれない」
 その言葉に、彼女たちはハチの巣をつついたような大騒ぎになった。

 「ちょっと、どういうこと?」
 「社長や副社長が深刻な顔で『浅野が機密情報漏洩』とかなんとか……言ってて」
 「えーっ! 大事(おおごと)じゃない」
 「そんなぁ、浅野くんのいない会社なんて、来る意味なくなる!」

 そんな彼女たちの言葉が耳に入ったとたん、血の気が引いてゆくのを感じた。

 ランチから戻ってきた正美が、わたしの顔を見て驚いた。
 「茉衣、どうしたの。顔真っ青だよ」

 「正美……」
 「ちょっと休憩室に行こう」
 「うん」

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