蕩ける愛であなたを覆いつくしたい ~最悪の失恋から救ってくれた年下の同僚に甘く翻弄されています~
「えっ、何? どういうこと?」
ずっと固唾を飲んで、二人のやりとりを見守っていた浅野推しの子たちがにわかに騒ぎだす。
そんな騒ぎには素知らぬ顔をして、一樹はわたしのそばに歩み寄ってきた。
「茉衣、平気? 倒れそうな顔してるけど」
わたしは頷きを返した。
「あまりにも驚きすぎて、もう脳がパンク状態だよ。だって浅野家って……」
「黙っててごめん。でも、茉衣には浅野家のフィルターを通して俺を見て欲しくなかったんだ」
一樹の言葉が途中からくぐもって聞こえた。
視界も遮られている。
なぜかといえば、わたしは一樹に抱きしめられていたから。
しかも「よしよし」と頭を撫でられながら。
えっとー。み、みんなの前なんだけど。
「か、かずき……ち、ちょっと、だめだよ」
そう抗議しても、一樹は一向にわたしを離す気配がない。
ようやくショックから立ち直ったのか、一樹推し女子たちの悲鳴が上がった。
「えー、なんで、そんなことになってるんですか? 梶原さんは伊川さんの彼女だったじゃない!」
そして、そのそばにいた留奈はさらに大声を上げた。
「もう、どうしていい男はみんな梶原さんが持ってっちゃうのよ。わたしのほうが若いし、ぜーったい可愛いのに」
伊川さんだって、わたしの方が可愛いよって言ってくれてたのに、と歯噛みして悔しがっている。
一樹は一瞬、わたしを離すと、彼女に冷たい一瞥をくれ、それから言った。
「岡路さん。SAEKIの専務の兄から伝言。『婚約はなかったことにしてほしい』って」
「えっ?」留奈はきょとんとした顔で一樹を見上げている。
ずっと固唾を飲んで、二人のやりとりを見守っていた浅野推しの子たちがにわかに騒ぎだす。
そんな騒ぎには素知らぬ顔をして、一樹はわたしのそばに歩み寄ってきた。
「茉衣、平気? 倒れそうな顔してるけど」
わたしは頷きを返した。
「あまりにも驚きすぎて、もう脳がパンク状態だよ。だって浅野家って……」
「黙っててごめん。でも、茉衣には浅野家のフィルターを通して俺を見て欲しくなかったんだ」
一樹の言葉が途中からくぐもって聞こえた。
視界も遮られている。
なぜかといえば、わたしは一樹に抱きしめられていたから。
しかも「よしよし」と頭を撫でられながら。
えっとー。み、みんなの前なんだけど。
「か、かずき……ち、ちょっと、だめだよ」
そう抗議しても、一樹は一向にわたしを離す気配がない。
ようやくショックから立ち直ったのか、一樹推し女子たちの悲鳴が上がった。
「えー、なんで、そんなことになってるんですか? 梶原さんは伊川さんの彼女だったじゃない!」
そして、そのそばにいた留奈はさらに大声を上げた。
「もう、どうしていい男はみんな梶原さんが持ってっちゃうのよ。わたしのほうが若いし、ぜーったい可愛いのに」
伊川さんだって、わたしの方が可愛いよって言ってくれてたのに、と歯噛みして悔しがっている。
一樹は一瞬、わたしを離すと、彼女に冷たい一瞥をくれ、それから言った。
「岡路さん。SAEKIの専務の兄から伝言。『婚約はなかったことにしてほしい』って」
「えっ?」留奈はきょとんとした顔で一樹を見上げている。