蕩ける愛であなたを覆いつくしたい ~最悪の失恋から救ってくれた年下の同僚に甘く翻弄されています~
 「俺、兄に頼まれていたんですよ。婚約者である岡路さんの会社での様子を教えてくれって。なので、あなたのこれまでの行状、兄にくわしく報告しておきましたので。近いうちに正式に連絡がいくと思いますよ」

 留奈はへなへなとその場に座り込んだ。

「そんなぁ……せっかくお父様がセッティングしてくれた、最高の玉の輿だったのに」
 
 留奈にちやほやしていた男性社員たちも、さすがに呆れたらしく、全員一斉に、留奈に冷ややかな視線を向けた。

 一樹は改めてわたしに向き直ると、もう一度抱きしめてきた。

 「ねえ一樹、もう離して」ともがくわたしを逃さないように腕に力をこめ、耳元でしれっと囁く。

 「だって、こうするしか茉衣を慰める手立てが思いつかないからさ」と。

 見えてはいないけれど、きっと、ちょっと悪い微笑みを浮かべているに違いない。

 わたしはこれからも、こうして翻弄されつづけるんだろうな、この年下の恋人に。

 わたしも彼の腕のなかで笑みをこぼした。
< 65 / 67 >

この作品をシェア

pagetop