蕩ける愛であなたを覆いつくしたい ~最悪の失恋から救ってくれた年下の同僚に甘く翻弄されています~

 ***

 それから……

 宣人は主任昇格を取り消され、さらに1カ月の停職と減俸処分を受けたけれど、会社は辞めさせられずに一樹と同じチームで仕事を続けている。

 解雇して、結果、ライバル社に行かれでもしたら余計にまずいことになる、と上層部が考えた結果らしい。

 一介の平社員に逆戻りしたプライドの高い宣人を、一樹は実にうまく使っており、社内での彼の評価は上がる一方だ。
 
 一方、留奈はみんなの前で婚約解消を暴露された翌日から、会社に来なくなった。
 常務から部長に「娘は辞める」と一言あったらしい。
 留奈にとって、ちやほやされない職場には用がないということだろう。
 
 突然の辞職だったけれど、重要な仕事を任せられていなかったので、いなくても、業務上まったく支障はなかった。

 冴木の御曹司との破談は、ネットニュースでも面白おかしく取り上げられたので、おそらく、もう彼女が望む“玉の輿”は不可能だろう。

 まあそれは、わたしのあずかり知らぬことだけれど。

 そして……
 わたしの母は一樹の紹介で、皇室方や政治家なども利用する、日本有数の大病院へ転院することができた。

 「冴木の祖母も心臓が悪くてね。そのとき、お世話になった先生。心臓病のスペシャリストだよ」

 数時間に及ぶ手術も成功し、今、母は退院して、父とともに、わたしたちと同じマンションで暮らしている。


 
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