デス・ドール
そう思って新室内を見回してみるけれど、ピエロの姿は見えなかった。
そのまま玄関を開けて外へ出てみると、街は死んだよりに静まり返っている。

犬や猫の鳴き声も聞こえてこないし、いつも遅くまで電気がついている家の窓からも、明かりが見えない。

街灯されもついていない。
月明かりしかない真っ暗な街。

「どうして……。みんな、いるんだよね?」
ふらりと隣の家に向かい、玄関チャイムを鳴らす。

だけど誰も出てきてくれない。
しつこいくらいに連続してチャイムを鳴らしてみても、全く反応がない。

嫌な予感に支配されたとき、暗い道の向こうにピエロの姿が見えた。

ピエロがジッとこちらを見つめていたかと思うと、ギギギッと無理やり方向転換して背中を向け、音楽を鳴らしながら闇の中に溶けていったのだった。
< 115 / 188 >

この作品をシェア

pagetop