デス・ドール
それでも隣で震えている綾の手を強く握りしめて、もう片方の手でスマホを確認した。
相変わらず画面は真っ暗で、竜二たちとの連絡は取れそうにない。

無事でいてくれれば、ここまで戻ってきてくれるかもしれないけれど……。
そう思ったときだった。

ギィとトイレのドアが開く音が聞こえてきて綾の体がビクリと跳ねた。
「誰か入ってきた」

小さな声で呟く。

耳を済ませてみると、カラカラと車輪が回る音が聞こえてきて、更にはピエロの奏でる音楽が聞こえてきたのだ。

音は徐々にトイレの個室へと近づいてくる。
「こ、こっちに来る!」

綾が小声で言う。
< 166 / 188 >

この作品をシェア

pagetop