デス・ドール
現れる
とにかく今自分の部屋にピエロはいない。
そのことに安心して眠りについた。

昨日は寝不足だったから、今日は思いの外グッスリと眠ることができた。
「まだいない……」

起きてすぐに出窓へ視線を向けるけれど、やはりそこにピエロはいなかった。
一体どこに行ったんだろう。

ナイフを持ったまま徘徊していると思うと、怖くて仕方ない。
早く見つけて捨ててしまったほうがいいのかもしれない。

そう思いながら学校へ行く支度をしてキッチンへ向かう。
お母さんとお父さんは昨日の私の話なんて忘れてしまったかのようにいつもどおりの朝を迎えている。

私も「おはよう」とだけ言って自分の席に座った。

香ばしいトーストの匂いに食欲を刺激されて、ピエロのことはひろまず忘れることができたのだった。
< 18 / 188 >

この作品をシェア

pagetop