侯爵様の愛に抱かれて。〜大正溺愛華族譚〜

第2話

(私の母親は、ご落胤……?)

 葉子からすれば全く知らない話である。しかし葉子を置き去りにしたまま正則の話は続く。

「公家であり侯爵家である花司家の当主が女中と恋に落ちて生まれたのが貴様の母親であるという訳だな」
「……じゃあ、なんで芸者に」
「女中が友人の芸者の元に預けたのだ。娘とはいえご落胤である事が知られれば面倒な事になると思ったのだろう」

 葉子は正則からその事を聞いた際、その女中はどうなっているのか、母親は花司家から認知されていたのかという疑問が頭の中で浮かんだのだった。

「紀尾井坂様」
「……正則でいい」
「で、では正則様。その女中はどうなったのです? それに母親は花司家の当主様からは認知されておいでなのでしょうか?」
「女中は今はこの近くで料理屋をしている。貴様の事もよく知っているさ。母親の存在は花司の当主であるあの爺さんは勿論認知しているとも。正妻やその子達は知らないがな」
「そう、なのですか……」

 自身の祖母にあたる人物が近くにいる。その事を聞いた葉子はぜひ会いたいという願いが胸の中で芽生えたのだった。

「正則様。よろしければその女中……祖母にあたる方とお会い出来ませんか?」
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