侯爵様の愛に抱かれて。〜大正溺愛華族譚〜
「あ」

 入り口近くの廊下を大波子爵が通った。彼は葉子とそのまま目が合うが、その流れで彼女と正則が共に来た来客である事も把握したのか驚きの表情で2人を見ている。

「よ、葉子? な、え?」
「あ、お父様……実は、その」
「大波子爵。貴様の娘をめとる事にした。事後報告になってすまない」
「え、ええ?!」

 子爵が大きな声を挙げた時。店主であるあの女中が葉子達の目の前に歩いてきた。

「いらっしゃいませ。ああ、あなたは……!」
「月子さん。あなたの孫を連れてきました」
「よ、葉子! 葉子なんだね……?」
「は、はい。大波葉子いや、紀尾井坂葉子と申します。は、初めまして」
「会いたかった……!」

 その後。正則専用の大広間へ正則と葉子の2人は案内された。子爵はどうやらゆみを伴いこの店へと来店していたそうで、その2人も話の場に付き添う事となった。
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