侯爵様の愛に抱かれて。〜大正溺愛華族譚〜
 結婚式は1週間後の大安の日に決まった。場所は紀尾井坂家の屋敷で豪勢に行われる。
 また、明日華族らがよく集う洋館にて結婚を報告する事も決まった。

「その洋館……よく舞踏会や夜会が行われる所ですよね?」
「ああ。葉子の言う通りだ。かの有名な鹿鳴館を模して作られた洋館だからな。……ただ」
「正則様?」
「もしかしたら、大波家の正妻や綾希子も来るかもしれない」

 紀尾井坂家の当主の奥方になる人物のお披露目。となると綾希子らも来るだろうというのは葉子達も薄々感じ取っていた。

(何されるかわからないわね)

 葉子はそう、頭の中で考えていた。最悪妨害や脅しもあるかもしれない。そう覚悟を決める。

(私は紀尾井坂の人間になる。もうあちらへは戻らない)
「そこでだ。俺から皆へお願いがある」

 正則は真剣な目つきで葉子達を見た。

「この事は内密にしてほしい。それに明日の舞踏会に俺が来るというのもなるべく伏せてほしい。その方が良いだろう」

 正則からの要望に葉子と子爵とゆみ、それに月子は黙って頷いた。

「正則様。勿論でございます」
「ああ、葉子。何事も無く無事に終われば良いのだが」
「そうですね……」
(お嬢様の事だ。この結婚必ず納得しないだろう)
< 21 / 52 >

この作品をシェア

pagetop