侯爵様の愛に抱かれて。〜大正溺愛華族譚〜
「もしかしてご一緒ですか?」

 その葉子からの問いに正則は当然だ。と答える。その声音にはほんの少しだけ恥ずかしさがにじみ出ていた。

「で、ですよね! 変な事聞いてしまってすみません」
「ああ、こっちこそいきなり言ってすまなかった。では、行こうか」

 正則は葉子に右手を差し出す。葉子はその手を取り、立ち上がった。

「よろしくお願いします」

 向かった先は寝室。かなりの広さの部屋で畳の上には既に白い無地の布団が敷かれていた。枕元には湯呑に入ったお茶が2つ備えられている。
 こうして葉子は正則の夜の相手を務め、朝を迎えたのだった。途中、うまくいかない事もあったりしたがなんとか初夜を終えたのだった。
 朝。葉子は痛みが残る身体を引きずるようにして起床する。

「よいしょ……」

 広間には葉子だけ。正則は既に起床したのか、広間にはいない。葉子はあたりを見回すが近くに人がいる気配もない。

「っ……!」

 処女ではなくなった事による痛みに加えて全身の関節がぎしぎしと鈍い痛みを発している。
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