侯爵様の愛に抱かれて。〜大正溺愛華族譚〜
「ん、たくあんこりこりしていて美味しい……! 屋敷のものとは違う……!」
(それに焼き鮭も美味しいしごはんも味噌汁も美味しすぎる。味噌汁はだしが効いているし味噌は屋敷で使っていたものとは多分違うものだ。何もかもが大波家の屋敷で食べていたものと違う。美味しい!)

 葉子が朝食を味わって食べていると、広間に着物に袴姿と武士のような格好をした正則がやって来た。慌てて葉子がお茶碗を置いて座礼し彼を出迎える。

「おかえりなさいませ!」
「ああ、ただいま戻った。朝食はもうあっちで取って来たから葉子はゆっくり食べていいぞ」
「ありがとうございます。では、失礼して……」

 葉子が朝食を美味しそうに頬張る様子を正則はじっと見つめていた。

(美味しそうに食べているな)
「ごちそうさまでした!」
「……葉子。おかわりはいるか?」
「えっ……あるんですか?」
「ああ。それくらいある。好きなだけ食べると良い」
「じゃ、じゃあ、ご飯とお味噌汁のおかわり貰っても良いですか……?」

 葉子が朝食を食べ終えた後。紀尾井坂家の屋敷にある人物が訪れた。

「おはようございます。紀尾井坂家のご当主様はいらっしゃいますか?」
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