侯爵様の愛に抱かれて。〜大正溺愛華族譚〜
 正則の話は更に続く。

「仮に妾の子が人に優しく、優秀で誰からも親しまれているようならその子が跡を継ぐのにふさわしいと考えるが。結局は子の資質が大事ではないか? 確かに血筋も大事ではあるが、正妻の子が妾よりも出来が悪いのであれば、それでは務まらんだろう」
「……っ」
「……お母様……」
「もう、いいわ。いきましょう」

 この場に居ずらくなったのか、綾希子と正妻はその場から早歩きですたすたと出ていった。しばらくホール内にはひりついた空気が流れるがすぐに消えてなくなった。

「紀尾井坂様! よく言ってくださいました!」
「確かに正妻の子が無能で妾の子が有能だったら、後者選びますよねえ」
「綾希子様はちょっと性格に難があるから、それなら葉子様の方がふさわしいよねえ」
「そうだそうだ」

 正則はふうと大きく息を吐いた。その様子を葉子はじっと見ながら彼に寄り添う。

「ありがとうございました」
「例には及ばない」
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