侯爵様の愛に抱かれて。〜大正溺愛華族譚〜

第4話

(少しでも……紀尾井坂家の奥方にふさわしいように努めなければ)

 そして時は過ぎ、結婚式当日の朝が来た。

「葉子おはよう。よく眠れたか?」

 いつものように道場での朝稽古を終えた正則が布団に横たわりまどろんでいる葉子に優しく声をかけた。

「あっ正則様!」

 葉子は急いでその場から飛び起きて座礼をして正則を出迎える。

「おはようございます、正則様!」
「驚かせてしまったな。もう少しゆっくりしていても良いがそろそろ朝食を済ませねば、着付け含め準備もたくさんあるからな……」
「そうですよね。朝食頂きます」
「ああ。焦らず食べてこい。俺はもう済ませたからな」

 葉子はさっと朝食を済ませてお手洗いや洗顔なども済ませてから髪結いに化粧、着付けと言った準備に入る。

(豪華な白無垢だわ……打掛も綺麗)

 紀尾井坂の屋敷の女中達や髪結いや着付けを専門職としている女性達が時間をかけ丁寧に葉子へ髪結いを施していく。

「葉子様の髪は美しいですね。艶があって指通りもさっぱりしています」
(本当かな……櫛でなるべくとくぐらいしかあまり手入れはしてなかったけど)
「本当ですか?」
「本当ですよ。こんなに綺麗な黒髪美しすぎますよう」
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