侯爵様の愛に抱かれて。〜大正溺愛華族譚〜
「それにあいつにろくな縁談が来なかったのもあるかもしれないな」
「……正則様」
「葉子は気にするな、あいつの事なんて考えなくて良い」

 すると部屋に若い看護婦2人が現れる。

「大波子爵様。お電話です」
「どなたからで?」
「警察です。紀尾井坂様も出来れば同伴お願いします」

 正則と子爵は看護婦に先導される形で揃って早足で部屋を出た。部屋にはゆみと葉子、看護婦1人だけとなる。

「なんでしょう?」
「おそらくは……綾希子さんの事でしょうね」
「ゆみさん……警察からだって、言ってましたものね」

 30分ほど経過した後、正則と子爵、看護婦が病室へと戻って来た。

「おかえりなさいませ、お父様。正則様」
「ああ、葉子。待たせたな。やはり綾希子の事だったよ。子爵についてきてよかった」
「お父様、一体警察と何を話されたんです?」
「今回の事でな、自主的に爵位を返上するようにと言われたんだ……だが、ゆみと再婚するなら別に爵位を返上せずとも構わないと」
「それでお父様はどのように」
「勿論後者だ。元より、ゆみと再婚すると決めたからな」
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