侯爵様の愛に抱かれて。〜大正溺愛華族譚〜
「いただきます」

 焼きサバは骨が全て取り除かれている。葉子は美味しい。と何度もつぶやき首を縦に振りながら朝食を堪能した。

(どれも美味しかった)
「ごちそうさまでした」
「はい。ではお膳おさげしますね。今から退院の書類や説明がありますのでお待ちくださいませ」

 着替えに看護婦や医者による退院後の生活による説明や書類への捺印などを済ませた葉子。そこへ正則や女中、付き人らも現れてめでたく退院となったのであった。

「皆さんありがとうございました」
「いえ! 葉子さんお元気で!」

 看護婦や医者達に見送られながら葉子達は病院を後にしたのだった。

「葉子。結婚式は再来週にまたやろうと思うんだが、どうだ?」
「そうですね、仕切り直しと行きましょう」
「ああ、今度こそ最後までやり遂げよう」

 2人は人力車にて穏やかに語り合いながら、空や街並みを見渡していたのだった。

「ただいま、戻りました」

 葉子は久方ぶりに紀尾井坂の屋敷へと足を踏み入れる。玄関では彼女の帰還を待ちわびていた多くの女中や付き人達が並んで出迎えてくれたのだった。

「奥方様! おかえりなさいませ!」
「ご迷惑おかけしました。戻る事が出来て良かったです」
(こんなに私の帰りを待っていてくれたんだ……嬉しい。こんな事は初めてだ)
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