侯爵様の愛に抱かれて。〜大正溺愛華族譚〜
 紀尾井坂の屋敷に温かく迎え入れられた葉子を正則がぎゅっと抱きしめた。

「また、一緒に暮らしていこう」
「はい、正則様……!」

 硬く抱きしめあい、愛と絆を再確認する2人を女中達はほっと一安心しながら穏やかに見つめていたのだった。
 それから日は過ぎて再度結婚式が行われた。今回も前回同様に紀尾井坂の屋敷にて執り行われたが招待客は前回よりも少なめに搾られた。また、前回着ていた白無垢は縁起が悪いという事で正則の指示により処分され、真新しい白無垢が用意された。

「着付けが終わりました」

 着付けが終わった葉子は女中の手によって用意された姿見で自分の姿を確認する。

「……やっと、あの日の続きが出来るんですね」

 そう、葉子が感慨深げにつぶやくと後ろからこれまた新しく用意した紋付き袴に着替えた正則がやって来た。

「よく似合っているぞ、葉子」
「正則様もかっこいいです」

 正則は葉子に右手を差し出し、葉子はそれを優しく取った。正則が葉子をエスコートする形で客がそろっている大広間へと歩き出したのだった。

「葉子、これからも俺と一緒に幸せに暮らそう」
「はい、正則様。あなたに会えてよかったです」
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