ドSキューピットさまと恋のお手伝い!
9話 恋のキューピット大作戦始動!
「奈々。今日は【幽滅の刃】の十巻から二十巻まで借りてきて」
はぁ……。
結局、ありさちゃんに話しかけられずじまいだったなぁ。
それというのも、あの歴史の授業のあと、ありさちゃんは六時間目の授業にも出ずに早退してしまったのだ。
体調、大丈夫かな。もともと雪のように白いツルツルのお肌が、もはや青白く透けそうになっていたけれど……。
「ねぇ。ボクのことを無視して、考え事?」
「ふぎゅっ!?」
頬を両側からひっぱられた!
「ご主人様を無視するだなんて、いつの間にか良いご身分になったものだねぇ、召使い」
ルカの美しい顔が不機嫌そうにゆがむ。
「ご、ごめんなひゃい……どーしても、ありさしゃんのことが、気になって」
「ま、そんなことだろうとは思ったよ。例の筆箱事件でしょ?」
「な、なんで、ルカが知ってるの?」
「キミの目を通して、ボクも見ていたからね」
契約を交わすとそんなこともできちゃうの? だんだん驚かなくもなってきたよ。
この際だから、ルカにも意見を求めてみよう。
「ありさちゃん、どうしちゃったんだろう。なんだか様子がおかしかったし、あの後も早退しちゃったし、心配でしかないよ……」
「たしかに、不可解ではあるね」
「ルカもそう思う!?」
「うん。だって、あの子は、ビン底メガネに恋をしているのに。どうして、あんな態度をとったんだろうね」
恋。
さらりと告げられた予想外すぎる単語に、固まるしかなくて。
恋って……あの恋!?
わたしの絶叫がルカ家を揺らしたことは、言うまでもない。
「……っっ。うるさいよ、バカ奈々。耳が割れる!」
「だ、だって……ありさちゃんが、あの水谷くんに恋をしてるって……いやいやいや。それって、なにかの間違いなんじゃないの?」
方や、誰からも憧れられる、きらきら美少女。
方や、天才ではあるけれども、正直それほどの存在感はないメガネ男子。
筆箱事件を抜きにしても、全くこれっぽっちも、結びつかない二人だ。
水と油以上にありえない組み合わせに思える。
「キミは、神であるボクがそうだと言っていることを疑うわけ?」
「うっ……」
そうだ。
あまりのぐーたらぶりに忘れかけていたけれど、ルカは正真正銘のキューピットさまなんだった!
「キューピットの名に誓って宣言するけれど、鏡見ありさは、水谷俊に恋をしている。これは間違いないよ。ただし、ボクには、これ以上のことは分からないけれど」
恋の神さまだから、人の恋愛事情をのぞくことができるんだ。
わたしの『彼氏がいる』というウソを鮮やかに見抜いたように。
「じゃ、じゃあ、水谷くんの方は?」
「いまのところ、ビン底の方にその気はなさそうだね。彼の恋愛事情は無。今のところ、誰にも恋をしていないようだ」
ウソ。
ま、まさかの、ありさちゃんの片想い!?
失礼なのは百も承知で思う。
逆じゃないの!?
「信じられない……」
「まぁ、人は見かけによらないってことだよ。恋の形は、人の数だけある」
ルカは、珍しく恋の神さまらしい発言をしたかと思えば、自分の仕事は終わったとばかりに再びふかふかベッドへとダイブした。
「で? 【幽滅の刃】、借りてきてくれるでしょ?」
「ごめん、今日は無理!」
「へぇ。このボクに逆らう気?」
「ルカ。わたし、決めたよ」
「はぁ?」
「ありさちゃんの恋のお手伝いをしたい! お願い、ルカ。手伝って!!」
*
そういうわけで、はじまりました!
ありさちゃんと水谷くんのひみつの恋のキューピット大作戦~~! いえーい!!
【うるさい、無駄にテンションが高い、心にまで落ち着きがない。全く……なんで、キミの方がそんなに張りきっているんだよ】
ありさちゃんね、あの筆箱事件以来、明らかに元気がないの。
この前の給食の時だって、大好きなはずのイチゴプリンにまったく手つけていなかったんだよ? 心配になって聞いたら、『食欲がないから、奈々にあげる』って、しょんぼりしていたの……。四月までは、とびきり幸せそうな顔で五つも食べていたのに!
【冷静に、四月の方が異常だったんじゃない? っていうか、五個もどこから持ってきたの】
ありさちゃんにメロメロな男の子たちが自主的に渡していたよ!
【なるほど。まぁ、貢ぎ物に関しては、ボクも人のことをとやかく言える立場ではないけれど】
もしかして、ルカもファンの女の子たちに、なにかもらっているの?
【まぁね。人間が神にひれ伏すのは当然でしょう?】
あっ。
はい。
まぁ、その話はまた今度聞くとして。
【キミ、ボクの扱いにだんだん慣れてきたよね】
わたしね、やっぱりありさちゃんの力になりたい!
明らかに元気がないありさちゃんを、このまま見過ごせないよ。
それに、ルカだって、神界に帰らないといけないんでしょ?
いつまでもマンガを読みつづけてばかりでぐーたらしていたら、恋の神さまから、ただの口の悪いマンガオタクに格下げだよ!? それで良いの!?
【……遠慮までなくなってきたよね】
「じゃあ、次の文を、大神さん。読んでください」
「だって、ルカがマンガばっかり読んでるのは、ほんとのことじゃん!」
はっ!
慌てて、口元を覆ったけれど、時すでに遅し。
教室の全員が目をまんまるにして、わたしを見つめていて……。
やっばーい!!
つい、ルカとの脳内会話に口で反論しちゃったけど、今は国語の授業中だった!
「大神さん。彼氏にお熱なのはようく分かったけれど、授業中はちゃんと授業に集中してね?」
いつもやさしい椎名先生がわたしを見つめながらニッッッコリと笑った時、あまりの恥ずかしさで顔が燃えそうだった。
はぁ……。
結局、ありさちゃんに話しかけられずじまいだったなぁ。
それというのも、あの歴史の授業のあと、ありさちゃんは六時間目の授業にも出ずに早退してしまったのだ。
体調、大丈夫かな。もともと雪のように白いツルツルのお肌が、もはや青白く透けそうになっていたけれど……。
「ねぇ。ボクのことを無視して、考え事?」
「ふぎゅっ!?」
頬を両側からひっぱられた!
「ご主人様を無視するだなんて、いつの間にか良いご身分になったものだねぇ、召使い」
ルカの美しい顔が不機嫌そうにゆがむ。
「ご、ごめんなひゃい……どーしても、ありさしゃんのことが、気になって」
「ま、そんなことだろうとは思ったよ。例の筆箱事件でしょ?」
「な、なんで、ルカが知ってるの?」
「キミの目を通して、ボクも見ていたからね」
契約を交わすとそんなこともできちゃうの? だんだん驚かなくもなってきたよ。
この際だから、ルカにも意見を求めてみよう。
「ありさちゃん、どうしちゃったんだろう。なんだか様子がおかしかったし、あの後も早退しちゃったし、心配でしかないよ……」
「たしかに、不可解ではあるね」
「ルカもそう思う!?」
「うん。だって、あの子は、ビン底メガネに恋をしているのに。どうして、あんな態度をとったんだろうね」
恋。
さらりと告げられた予想外すぎる単語に、固まるしかなくて。
恋って……あの恋!?
わたしの絶叫がルカ家を揺らしたことは、言うまでもない。
「……っっ。うるさいよ、バカ奈々。耳が割れる!」
「だ、だって……ありさちゃんが、あの水谷くんに恋をしてるって……いやいやいや。それって、なにかの間違いなんじゃないの?」
方や、誰からも憧れられる、きらきら美少女。
方や、天才ではあるけれども、正直それほどの存在感はないメガネ男子。
筆箱事件を抜きにしても、全くこれっぽっちも、結びつかない二人だ。
水と油以上にありえない組み合わせに思える。
「キミは、神であるボクがそうだと言っていることを疑うわけ?」
「うっ……」
そうだ。
あまりのぐーたらぶりに忘れかけていたけれど、ルカは正真正銘のキューピットさまなんだった!
「キューピットの名に誓って宣言するけれど、鏡見ありさは、水谷俊に恋をしている。これは間違いないよ。ただし、ボクには、これ以上のことは分からないけれど」
恋の神さまだから、人の恋愛事情をのぞくことができるんだ。
わたしの『彼氏がいる』というウソを鮮やかに見抜いたように。
「じゃ、じゃあ、水谷くんの方は?」
「いまのところ、ビン底の方にその気はなさそうだね。彼の恋愛事情は無。今のところ、誰にも恋をしていないようだ」
ウソ。
ま、まさかの、ありさちゃんの片想い!?
失礼なのは百も承知で思う。
逆じゃないの!?
「信じられない……」
「まぁ、人は見かけによらないってことだよ。恋の形は、人の数だけある」
ルカは、珍しく恋の神さまらしい発言をしたかと思えば、自分の仕事は終わったとばかりに再びふかふかベッドへとダイブした。
「で? 【幽滅の刃】、借りてきてくれるでしょ?」
「ごめん、今日は無理!」
「へぇ。このボクに逆らう気?」
「ルカ。わたし、決めたよ」
「はぁ?」
「ありさちゃんの恋のお手伝いをしたい! お願い、ルカ。手伝って!!」
*
そういうわけで、はじまりました!
ありさちゃんと水谷くんのひみつの恋のキューピット大作戦~~! いえーい!!
【うるさい、無駄にテンションが高い、心にまで落ち着きがない。全く……なんで、キミの方がそんなに張りきっているんだよ】
ありさちゃんね、あの筆箱事件以来、明らかに元気がないの。
この前の給食の時だって、大好きなはずのイチゴプリンにまったく手つけていなかったんだよ? 心配になって聞いたら、『食欲がないから、奈々にあげる』って、しょんぼりしていたの……。四月までは、とびきり幸せそうな顔で五つも食べていたのに!
【冷静に、四月の方が異常だったんじゃない? っていうか、五個もどこから持ってきたの】
ありさちゃんにメロメロな男の子たちが自主的に渡していたよ!
【なるほど。まぁ、貢ぎ物に関しては、ボクも人のことをとやかく言える立場ではないけれど】
もしかして、ルカもファンの女の子たちに、なにかもらっているの?
【まぁね。人間が神にひれ伏すのは当然でしょう?】
あっ。
はい。
まぁ、その話はまた今度聞くとして。
【キミ、ボクの扱いにだんだん慣れてきたよね】
わたしね、やっぱりありさちゃんの力になりたい!
明らかに元気がないありさちゃんを、このまま見過ごせないよ。
それに、ルカだって、神界に帰らないといけないんでしょ?
いつまでもマンガを読みつづけてばかりでぐーたらしていたら、恋の神さまから、ただの口の悪いマンガオタクに格下げだよ!? それで良いの!?
【……遠慮までなくなってきたよね】
「じゃあ、次の文を、大神さん。読んでください」
「だって、ルカがマンガばっかり読んでるのは、ほんとのことじゃん!」
はっ!
慌てて、口元を覆ったけれど、時すでに遅し。
教室の全員が目をまんまるにして、わたしを見つめていて……。
やっばーい!!
つい、ルカとの脳内会話に口で反論しちゃったけど、今は国語の授業中だった!
「大神さん。彼氏にお熱なのはようく分かったけれど、授業中はちゃんと授業に集中してね?」
いつもやさしい椎名先生がわたしを見つめながらニッッッコリと笑った時、あまりの恥ずかしさで顔が燃えそうだった。