男嫌いと噂の美人秘書はエリート副社長に一夜から始まる恋に落とされる。
 更衣室に入って、私はいつもの服装に戻る。

 今日の衣服はブラウンのブラウス。それから、ベージュのパンツだ。世にいう、きれいめという服装になるのだと思う。

 元々女性にしては高身長の私は、壊滅的に可愛い服装が似合わなかった。というわけで、いつもシンプルなきれいめにまとめている。

 着替えて、少しだけメイクを直して。髪の毛を整え、更衣室を出て行こうとする。そうすれば、後ろから声をかけられた。

「香坂さん。なんか今日、ご機嫌ですね」

 そこにいたのは、営業課にいる同期の女性百田(ももた)さんだった。

 彼女はニコニコと笑って私に声をかけてくる。だから、私は曖昧に笑った。

「そう?」
「はい。なんか、いつもよりも輝いて見えます」

 同期とあまり親しくしていない私だけれど、百田さん……それから、もう一人の女性社員とは割と話す。

 そのためか、彼女は私の些細な変化に気が付いたらしい。

(別に輝いているっていうほどでは……)

 単に副社長と食事に行くというだけなんだけれど。

(まぁ、好みド真ん中な男性との食事だし。……今までになく、張り切ってはいるのかも)

 とはいっても、私は副社長とそういう関係になりたいとは思っていない。身分だって全然違うし、職場恋愛はご遠慮願いたい。あと、あそこまで好みになると、もういっそ観賞用と割り切りたい。
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