男嫌いと噂の美人秘書はエリート副社長に一夜から始まる恋に落とされる。
「では、副社長、行きましょうか」

 さすがに社長の甥っ子さんと呼ぶことは出来なくて、私は副社長と呼ぶことにした。

 彼は返事とばかりに頷かれる。……あまり、口数の多いお人ではない……そうだ。

 社長室を出て、私は彼に視線を向ける。心臓がとくとくと早足になっている。ダメだ、冷静にならなくちゃ。

「……香坂さん」

 自分自身にそう言い聞かせていれば、ふと副社長に名前を呼ばれた。

 驚いて勢いよく振り返って……首が痛かった。

 自然と首を押さえる私を見て、副社長が「大丈夫ですか?」と声をかけてくださった。

「……その、すみません。俺の図体がでかいばかりに……」
「い、いえ、今後、気を付ければいいので……」

 じんじんと痛む首を押さえつつ、私はぎこちない笑みを向けた。

 ……今後、気を付けよう。心に強くそう誓う。
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