疫病神の恋
「結城さん、お昼いっしょに行きませんか?」
 彼が入社してから早一週間。
 時計の二本の針が仲良くてっぺんを指すと、隣のデスクから声をかけられるのがここ数日の慣例になりつつある。

「申し訳ありませんがご遠慮させていただきます」

 彼は、あっという間に会社に溶け込んだ。
 まるで何年も前からの仲間のように、周りの人から親しげに下の名前で呼ばれて囲まれている。

 そして今も数名の女性社員が、彼をランチに誘いたそうにこちらの様子を窺っている。

 誰とも関わらないようにしているのに、ここで仲良く二人でランチに行く様子を見せつけるなんてことをできるわけがない。

「わたしはお昼ごはんもそれ以外の時間も、一人で過ごしたいんです。ですので、お気遣いなくおねがいします」

 輪の中に入りたいけど入れない、というわけではないのだから、同情はいらない。
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