強引な御曹司社長は色気のない女刑事にご執心!
「ちょ、ダメだよ」
 諒也は慌てて咲弥を止める。

「その気性、好みだ」
 悠雅が咲弥の頬に手を伸ばす。
 咲弥はその手を払い飛ばした。
 悠雅はまたクッと笑った。

「このあとの予定は? 食事でもどうだ」
「お断りします」
「そんな調子では恋人もできないだろ」
「そうなんですよねえ。良い人いないですかね」
 すかさず諒也が答える。

「余計なお世話!」
 咲弥が怒ると、優雅は目だけで笑った。
「明日は一緒にいられるのを楽しみにしているよ」
 話は終わりだと言わんばかりに彼は背を向けた。
 失礼します、と二人は部屋を出た。

 咲弥は腹立たしい気持ちでいっぱいだった。
「あの人、僕のこと眼中になかったねえ」
 諒也の言葉に、咲弥は首をかしげて彼を見た。

「まっすぐ、雛川さんだけ見てたよ。お知り合い……じゃないよね」
「会ったことないわ」
 咲弥は眉を寄せた。胸がざわざわして、なんとも落ち着かなかった。



 翌朝、咲弥はいつも通りパンツスーツで出勤した。
 獅子堂開発株式会社の本社に直行だ。
 諒也と合流し、受付でゲストの入館証をもらって昨日も訪れた社長室に行く。
 と、彼は机に向かってノートパソコンでなにかの作業をしていた。
 咲弥を見て立ち上がり、目を細める。

「なんだそのかっこうは」
「仕事ですから」
 咲弥は冷たく返す。一応、きれいなほうのスーツを着ていたつもりではいた。
「まあいい、想定内だ。今日は昼すぎまで仕事をして、夕方から会場に向かう」
「了解しました」
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