強引な御曹司社長は色気のない女刑事にご執心!
 女へのプレゼントを買うのか、と咲弥はあきれた。命を狙われている人の行動とは思えない。
「いらっしゃいませ、獅子堂様」
 女性の店員がにこやかに彼を出迎える。

「彼女に似合うドレスと靴、アクセサリーも」
「は?」
 肩を抱くようにして言われ、咲弥は間の抜けた声を出した。

「かしこまりました」
「レセプションにそんなかっこうの女を連れ歩くわけにはいかないからな」
「余計なことしないでください!」
「えー、いいなあ」
 羨ましがる諒也を咲弥はにらんだ。諒也は慌てて口を閉じる。

「着替えないなら、護衛は降りてもらう。ああ、残念だ。これで俺が殺されたら、君はずっと後悔するんだろうなあ」
 にやにやと笑みを浮かべ、悠雅が言う。

 この男は……!
 咲弥はにらみつけるが、まったく彼は動じない。

「こちらへどうぞ」
 女性に言われ、咲弥はあきらめて彼女について歩いた。
 絶対にあいつのこと許さない。
 心にめらめらと怒りを燃やした。



 何着も服を着せられ、靴を履かされ、咲弥はうんざりした。
 着替えるたびに悠雅に見せなければならないのが、なんだか屈辱的だった。
「それがいいな」

 彼が言ったのは、黒いワンショルダーのロングタイトのドレスだった。レースなどの装飾はなく、胸を強調するようなデザインで、スカートには大きくスリットが入っている。

 銀色の大きなアームレットをショルダーのない右腕につけさせられた。
 同じくシルバーのハイヒールを履かされる。いつもと視点が違うので戸惑ってしまう。
 彼女はハイヒールを避けていた。男性より背が高くなってしまうと、それもまた嘲笑や侮蔑の種になるからだ。

「こんなの護衛になりません!」
「そのハイヒールは走ることもできるっていう触れ込みだぞ」
 面白そうに、悠雅は言う。
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