あやかし捜索係は、やがて皇太子に溺愛される
関韋と従者らを外で待たせ、朱璃と伯蓮は廟内へと足を踏み入れた。
前回は大幕がかけられていた鮑泉の塑像が、今は中心部で誇らしげに祀られている。
外が明るい時間に見るのが初めてだった朱璃は、冕服を纏い本物の冕冠を被った鮑泉の塑像を眺めながら呟いた。
「……やっぱり、伯蓮様によく似ています」
「鮑泉様が、私に?」
「はい。瓜二つと言ってもいいくらいに、優しい目元やスッとした鼻筋……凛々しい表情も」
「そ、そうか……」
鼻に指を添えながら少し照れ臭くなった伯蓮は、朱璃がそんなふうに思っていたことを初めて知る。
まるで直接自分が褒められているようで、胸がぎゅっと締め付けられた。
しかし、朱璃の中では目の前の鮑泉の塑像が、未来の伯蓮の姿をそのまま現しているようで、遠い存在に感じてしまった。
現皇帝が退位し、伯蓮が第二十代皇帝として即位した暁には、こうして冕服と冕冠を被り、凛々しい表情で玉座に座る姿がお披露目される。
それが楽しみでもあり、少しだけ寂しくも思う朱璃は、今の複雑な気持ちを隠したまま鮑泉の塑像前で両手を合わせた。
伯蓮も隣の朱璃に倣い、両手を合わせて鮑泉への祈りを捧ぐ。
すると、塑像の肩からひょっこりと顔を出したあやかしがいた。
「……っ貂々!」
「廟が修復されたらしいから、見に来てやったぞ」
言いながらチラリと伯蓮に目を向けるが、特に礼などは口にせず。
だけど心なしか嬉しい感情が顔に出ているように見えて、朱璃がくすりと笑う。
「綺麗にしてもらえてよかったね。鮑泉様の塑像もほら、とってもかっこいいよ!」
「当たり前だ。それは私なのだから」
「でもこんなに顔がよかったら、確かにたくさん妃が集まってモテモテだったろうな……」
悲恋を経験したあと、酒と女遊びにうつつを抜かしていたらしい鮑泉の顔を眺めながら、少し考えた朱璃は次に伯蓮の顔を覗き込んだ。
一瞬ドキッとした伯蓮は困惑しながらも、その熱い視線を受け止める。
すると、朱璃の口から予想だにしない質問が投げかけられた。