あやかし捜索係は、やがて皇太子に溺愛される
広大な大陸の中でも、夏は涼しく冬は雪が積もる北の地域があった。
その場所を治めている国家が、鄧北国。
長らくこの地に住む鄧一族によって続いてきた王朝は、近年王宮内で小さないざこざはあるものの、
優秀な臣下や軍に恵まれ、何より皇帝陛下という神の象徴の下、なんと四百年の歴史を持つ。
外郭で囲まれた巨大王都の柊安も、
周辺の郡城や郷も安泰な生活を送っていた。
伯蓮はそんな由緒ある王朝を治める十九代皇帝陛下の後継として、非常に期待が高まる皇太子であった。
齢十七歳にして、その外見は眉目秀麗で透き通るような白い肌を持ち。
おなごよりも美しく長い髪には、煌びやかな簪が飾られている。
常に冷静沈着で聡明と評価も高い彼は、官吏たちのみならず、
後宮に住まう皇帝妃の侍女や宦官、下働きの下女たちの間でも密かに知れ渡っており。
本人の意思などお構いなしに、未来の第二十代皇帝として人気者となっていった――。