あやかし捜索係は、やがて皇太子に溺愛される
三々の指示通り、庭園の池までやってきた朱璃は涼亭を見つけて駆け寄った。
「お待たせー!」
「おう! もうみんな集まってるぞ」
羽ばたいてきた三々に挨拶をして、涼亭に足を踏み入れた。
そこには手のひらに乗るくらいのあやかしから、抱き抱えられるくらいのあやかしまで。
あらゆる種類の子らが五十匹ほど大集合している。
あやかし好きな朱璃にとって、極楽のような世界が広がっていた。
「……か、かわいい!!」
「興奮すな、目的忘れんなよー」
「あ、そうだった。こんなにたくさんのあやかし集めてくれてありがとう、三々!」
満面の笑みを咲かせながら感謝の気持ちを伝える朱璃に、三々は満更でもない様子で翼の先で頭を掻いた。
しかしその中に馴染みの貂々の姿は見当たらなくて、中庭の木の上から動きたくなかったんだな、と想像して残念そうに微笑む。
気を取り直した朱璃は一枚の紙を取り出し、集合してくれたあやかしたちに流の絵を見てもらった。
「蒼山宮からいなくなっちゃった空色のあやかしなんだけど、何か知ってる子いる?」
ゆっくりと屈んだ朱璃の手元を凝視するあやかしたち。
そのほとんどは人間の言葉が話せず、特徴的な鳴き声で主張してくる。
夜中にかなりの騒音ではあるが、あやかしが視えない人々には何の支障もないのが救いだ。
「あ、じゃあ挙手制にしようかな! 見たことある人ー!」
人ではないけれど、と自分自身にツッコミながらあやかしたちの動向を眺める。
すると、ちらほらと手が上がっていて、朱璃は感動していた。
「今まで全然手がかりなかったから、すごい成果だよ……!」
「安心するのはまだ早い。聞いてみないと信憑性はわからないからな」
朱璃の肩で羽を休める三々の言葉が的確で、まるで侍従のような働きぶり。
まずは話を聞いてみようと、手前のあやかしから聞き込みを開始した。
「あたしは蒼山宮内で見かけたわ。でも随分前よ」
「わしは十日くらい前に、皇帝陛下の宮の近くで見たぞ?」
あやかしたちの情報を時系列にして考えていく。
どうやら流は蒼山宮を出てしまい、皇帝陛下の住居区域、宮城にまで移動した可能性が浮上する。
捜索範囲が一気に広まって、朱璃も少し不安を抱えた。