あやかし捜索係は、やがて皇太子に溺愛される
「……伯蓮、様……心配ばかりかけて、すみません……」
「いいんだ。私こそ、こんな目に遭わせてしまってすまなかった。痛むところはないか?」
「は、はい……寒気はしますが、先ほどよりは良く――」
そんな朱璃に自分の外套を羽織らせた伯蓮は、更に暖めるようその上からキツく抱きしめた。
突然の密着度に朱璃も一瞬驚くが、恥ずかしさより安心感が勝ってしまい、伯蓮の襟元をキュッと握る。
その仕草がとてつもなく伯蓮の心を刺激して、一気に愛おしさが増加するとドキドキがおさまらなくなった。
しかし、初々しい反応を傍観していた不審な男が一言、二人の再会に水をさす。
「変なこと考えんなよ」
「……なっ! 考えてなどいない!」
「まだプンプンにおってんだからなー」
その声を聞きハッとした朱璃は、意識を失う前に手足の縄を解いてくれた人物だと気づく。
やっとその姿を確認できると顔を上げた途端、廟内に悲鳴が響き渡った。
「キィヤアアアア! ななななんではだか!」
「朱璃までなんだよ! せっかく助けてやったのに!」
「前を! せめて前を隠してくださいぃぃ!」
真っ赤にした顔を背ける正常な反応の朱璃に、納得しかない伯蓮はお返しと言わんばかりに不審な男を軽蔑の眼差しを向ける。
こんな寒い夜に、一体どういう理由があって全裸なのか。
普段も服を着ていないとは、この男はまともな人間なのか。
男子禁制の後宮内であってはならない事態が発生し、伯蓮が頭を悩ませていた時。
朱璃が大事なことを思い出して、伯蓮に共有した。
「伯蓮様! ここで流を発見したんです! 会えましたか⁉︎」
「え! 流が⁉︎ 私はまだ見ていないが……」
「また棚の下に隠れちゃったのかもしれません……!」
命の危険にさらされた自分の体のことよりも、流について必死に訴える朱璃。
底知れぬ優しさと心の清さを感じた伯蓮は、自然と笑みが溢れてしまった。
そしてあたふたする朱璃の手を取って、優しく落ち着かせる。
「わかった。朱璃の体温が戻ったら共に探そう」
「あ、ありがとうございます……」
いつになく近距離に伯蓮を感じるせいか、朱璃の心もざわざわと騒がしい。
すると、ついに不審な男が正体を明かしはじめた。