よあけとあさひ
5.キミとの別れ

1. 新たなはじまり


 まぶたが上がる感覚がした。

 ぼんやりとした視界のなか、少しだけ目を動かすと、オレンジ色が目に入った。


 マリちゃんからもらったアフリカンマリーゴールドだった。


「……っ、アサ!? あ、っ、アサ……!」


 わたしをのぞきこむようにして見た男の子が、あわてて声をあげナースコールを押した。



「……よ、るくん……」


 目が覚めて、いちばんさいしょに見えたのはヨルくんの顔だった。
 ヨルくんの後ろから、お父さんとお母さんもわたしの顔をのぞきこんでいる。みんなが涙を流していて、それに笑おうとしたらわたしの目からもスッとあたたかい涙がこぼれた。




「アサ……がんばったな」

 お父さんが褒めてくれる。


「アサ……もう大丈夫だからね。よくがんばったね」

 お母さんが褒めてくれる。



「アサ……アサ、俺」


 三人の中で、ヨルくんがいちばん泣いている。わたしの名前を呼びながら、ぼろぼろと涙をこぼしている。大好きな人たちの顔がまた見られたこと。
 すごくすごく嬉しいよ。


 そこへ雫先生とカスミさんが入ってきた。わたしの状態を確認すると、わたしの手を握って雫先生は微笑んだ。



「アサちゃん、手術は成功しました。よくがんばったわね」

「ほんとうに……? わたし、なおったの…?」


 雫先生は力強くうなずいた。

 胸に手を当てると、たしかに鼓動が響いている。誰かの心臓が、わたしの身体を動かしてくれている。


 どこの誰かもわからないひとだけれど、大切な大切ないのち。ヨルくんと一緒にいる希望をわたしにくれた、大切な心臓。

 本当にありがとう。この命をくれた、どこかの誰か。


 わたしはこの命を大切にして、これからもずっとずっと生きるよ。

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