よあけとあさひ



 手術から数日経って、わたしの退院の日が正式に決まった。
 そのことをヨルくんに伝えると、ヨルくんはとても嬉しそうにしてくれた。

 ヨルくんは、


『すぐに俺もよくなって、アサに会いに行くから』


と言ってくれた。

 最終日に渡す予定の手紙に、お母さんの電話番号を書いておいた。手紙を書いている最中は、ヨルくんとの思い出がたくさんよみがえってきて泣きそうになったけれど、ぜったいにすぐ元気になって会えると信じているから、なんとか耐えたんだ。


 手紙には、わたしからの想いが込められている。だから今読まれてしまうのはちょっとだけ恥ずかしい。

 最終日に渡すのがいちばんいいし、安心するから。



 退院は来週の月曜日。カウントダウンをすると、あと五日ってことだ。

 そのとき、軽快な声が聞こえた。



「アサ!」


 その一声だけで、わたしの心は満たされていっぱいになる。大好きな人の声。


「ヨルくん!」

「今日はさ、ブレスレットづくりしようぜ! マリが言ってたやつ、一緒にしよう。ユウもアスもひだまりルームでアサのこと待ってるから」



 にこっと笑うヨルくんに胸が高鳴る。


「ブレスレットづくり、やりたい!」

「じゃあひだまりルーム行こう!」



 差し出された手を、迷うことなく握る。大好きな人の、大好きな手の感触。

 わたしはそのぬくもりと幸せを、大切に噛みしめた。

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