よあけとあさひ

2. 旅立ちのとき


 とうとうきてしまった退院の日。喜ばしいことのはずなのに、ヨルくんやアス、ユウくんやカスミさん、雫先生と離れるのは少しさみしい。目を閉じて、今までの記憶を思い起こす。

 いつだって、わたしはひとりじゃなかった。一緒に病気と闘って、わたしに前を向かせてくれる人がいた。


 わたしは今、お父さんとお母さんと一緒に、病院のソファでヨルくんがくるのを待っている。

 わたしの腕には、ヨルくんが作ってくれた紫色のブレスレットがある。ヨルくんのは深い青色をベースにしてつくった。

 アスのブレスレットは赤。ユウくんのは黄緑とピンクのミックス。
 そして、マリちゃんのはオレンジ色と黄色でつくった。


 マリちゃん、どこかで見てるといいな。みんなでマリちゃんのブレスレットをつくってるところ。



 ヨルくんへの手紙をぎゅっと握りしめて、ヨルくんを待つ。ヨルくんは検診に行ったあと、わたしのところにきてくれると言った。

 それなのに、約束の時間になってもヨルくんは現れなかった。



 病院を出る予定の時間が近づいてきて、お父さんもお母さんもだんだん焦り始める。


 なんでよ、ヨルくん。
 どうしてこないの?



「ごめん、お父さんお母さん。ちょっと行ってくる」

「ちょっと、アサ……」



 両親の声を最後まで聞くより先に、早歩きで廊下を進み、ヨルくんの病室を目指す。

 その途中で、焦ったように走ってきた誰かとぶつかりそうになった。


「うわっ……」

「あ、アサちゃん……!!」

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