よあけとあさひ
2. 気になるあの子
「ねえ、カスミさん」
病室に帰って、点滴の用意をするカスミさんに話しかける。すると、カスミさんはふわふわの髪を揺らして振り返った。
「……その。新しく、男の子が来たり……した?」
「えっ?」
「ほら、えっと……」
どう言ったら伝わるのかな。
なにか、特徴は……。
しばらく目をつむって考える。
「あ! バスケットボール持ってた男の子なんだけど」
ひらめいたように声を上げると、「ああ!」と同じように声を上げたカスミさんはにやりと口の端っこを上げた。
「ヨルくんのことね?」
「ヨルくん?」
「そうそう。今日から新しく入った子」
やっぱり。見たことなかったもん。
そんなことを思って少し得意げになっていると、カスミさんに、
「気になるの?」
と聞かれる。わたしは思わず「違うよ!」と素っ頓狂な声をあげてしまった。
「そういうわけじゃないけど、新しい顔だったから、誰だろうと思って」
「ふぅーん」
「……ね、ねえなにその顔!!」
相変わらずにやにやしているカスミさん。ほおを膨らませると「ごめんごめん」と謝られた。
「でも、アサちゃんがそうやって人のこと気にするの初めてだから。つい、からかいたくなっちゃって」
「もう! カスミさん!」
微笑んだカスミさん。笑うと目がなくなるほど細くなるところが、案外好きだったりする。本人には言ったことないけど。