よあけとあさひ

 どんなに暗くて絶望するような夜だったとしても、それはいつか必ず明ける。生きているかぎりは、何度も、何度でも、夜明けを迎えることができる。



「わたし……アサヒっていうの。朝の日って書いて、朝日」



 そして、何度でも朝日の輝きを見ることができる。








「よあけとあさひ」






 夜明くんがつぶやいた。
 そのあとで、俺たちらしくていい名前だな、と夜明くんは笑う。だんだん暗くなっていく空。これからゆっくりゆっくり、夜に向けて時間が進んでいくんだ。




 いつか一緒によあけをむかえて、あさひを見よう。




 外の世界で、わたしたちはもう一度出会えた。

 交わしたたったひとつの約束を、ふたりの合言葉にして。




「朝日、好きだよ」

「わたしも夜明くんが好きだよ」



 恥ずかしくて目を逸らすと、ふいに夜明くんの唇がわたしの額にそっと触れた。驚いて顔をあげると、にやっといたずらっぽく笑う夜明くんの顔があった。

 けれどそれもまた、柔らかい微笑みに変わる。




「……だいすきだよ、朝日」

「わたしも。世界でいちばん大好きだよ」




 そうしてわたしたちは前みたいに手をつないで、幸せを噛みしめながら約束を果たした。



 空には満天の星々が、わたしたちを祝福するように輝いていた。

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